うつ病と抑うつ気分
気分の落ち込みや、やる気が起きないなど、こころの不調は誰もが経験するものです。
このような気分の落ち込みと、うつ病の違いを見分ける1つのポイントは、「どのくらい長く気分の落ち込み(抑うつ状態)が続いているのか」ということです。
ちょっとした気分の落ち込みなら、2、3日もすれば回復しますし、カラオケや飲み会などで気晴らしをすれば、憂うつな気分が吹き飛ぶこともあります。
しかし、うつ病では気分が落ち込んだ状態が2週間以上も続き、何をやっても「気が晴れる!」ということはありません。
社会生活や生きるために必要なことへの関心・意欲が起こらなくなる心の病気です。
うつ病の種類
うつ病はその症状のあらわれ方で、大きく2つに分類されています。
抑うつ状態だけが起こるタイプの「うつ病(大うつ病性障害)」と、抑うつ状態と躁(そう)状態の両方が起こる「双極性障害」です。
「双極性障害」は、以前は「躁うつ病」と呼ばれていました。
非常に元気がよくなって、何でもできると思い込む躁の状態と、抑うつ状態の2つの極端な気分の波があらわれるのが特徴です。
抑うつ状態のときの症状自体は、うつ病と異なるものではないので、うつ病と間違われることもあります。
うつ病と双極性障害の抑うつエピソード(躁うつ病のうつ状態)はその原因や経過だけでなく、くすりや治療法も基本的に異なります。
うつ病の患者数
平成14年に厚生労働省が行った調査では、うつ病の有病率6.5%であり、15人に1人が生涯に1度はうつ病にかかる可能性があると報告されています。
(成人においては、13人に1人がうつ病経験者であると報告されている。また日本で働く人の10人に1人が「うつ病」と診断されていることが、デンマークに本社がある製薬企業「ルンドベック・ジャパン」の調査で分かった)
うつ病患者さんは年々増加しており、2008年にはうつ病と躁うつ病(双極性障害)とあわせて100万人以上になったといわれています。しかし疫学調査からは300万人以上のうつ病の患者さんがいると推定されていますので、うつ病患者さんの4人に3人はきちんと医師を受診していないことから、実際にはさらに多くの患者さんがいると考えられます。
しかし、インターネットの普及によって、ホームページなどでうつ病のチェックを行い、医師に相談するという人もまた少しずつ増えてきています。
また、うつ病は男性より女性に多くみられるほか、年齢別では55~74歳の発症率が高く、15歳未満も発症しています。
ストレス社会でうつ病は、まさに誰でもかかりうる身近な病気、common disease(ありふれた病気)なのです。